日々是Is'+ (アイズプラス代表 池照ブログ)

Is'+の視点による人事、キャリア、その他もろもろについての徒然 ver.1

「鎌倉で働く」を考える ~

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3/11に『「鎌倉で働く」を考える会議』にスピーカーとして参加させていただきました。これは、この街でサテライトオフィスを事業運営するエンジョイワークスさんが中心となり実施に至ったもので、遊びに来る観光の町鎌倉から「働くまち鎌倉」としてのイメージ確立を目指す鎌倉市の助成事業の一つとしても紹介されています。

鎌倉市/鎌倉で新たなビジネススタイルを発信する事業(鎌倉市企業活動拠点整備事業)を認定しました

今回私は、企業向け人事関係コンサルティングから得た視点と、急な依頼にも関わらず十数社の皆さまから情報提供協力のあったテレワークやサテライトオフィスの実態データなどをもとにお話をさせていただきました。今日はこれについてご紹介します!

【そもそもサテライトオフィスって何?】

サテライトオフィス(satellite office)とは、本社とは離れた場所にあり、本社機能の一部を持つ事務所のこと。本社を中心とした時、衛星(サテライト)のように存在するオフィスとの意から命名されました。 (日本の人事部 人事辞典)

定義ではあくまで”本社中心とした時のサテライト”というものですが、今回私達が鎌倉でご紹介しているのは、特定の企業のサテライトではなく、様々な企業から来る方やフリーで仕事をする方々が集う よりごちゃまぜな仕事環境を目指しています。東京から1時間の鎌倉という場所に、企業の方、フリーランスの方、そして自営の方等がそれぞれに自分の目的を持ってくる集まり仕事をする場所、のイメージですね。

 

【企業が企業の外に出る時】

では、企業の方々があえて企業の外にでて働くって、どうゆうことなんでしょうか?場所として企業の中でなく外に出る企業外勤務は、一般的に「テレワーク」として推進されています。一般的な定義は”情報通信技術(IT)を活用した「場所」と「時間」にとらわれない柔軟な働き方のこと" ですね。国土が小さく、皆が同じ場所に通勤して仕事をするのが当たり前なケースが多かった日本では、企業外勤務に目を当てたのは比較的最近のことでした。

東日本大震災による非常時対策、そして女性の労働増加や働き方の多様化を受け、ここ数年各社ともにこの「テレワーク対策」は経営課題に上がることが増えています。弊社でも、ここ数年は常にコンサルティングのテーマとして各クライアントとご一緒しているのが「働き方改革」一貫としての「テレワーク化促進・検討」だったりするので。

【で、いろんな会社の方に聞いてみました】
では、企業のテレワーク施策は、現在どんな状況になっているのか、そして、今回ご紹介するようなサテライトオフィスを使うならどんな機能やサービスを望むのか?限られた時間ではありましたが、イベントでは訳30名に情報提供いただいた以下の3つ質問への回答を中心にご紹介しました。

ちなみに、ご協力いただいた皆さんの内訳は、日系&外資メーカー、IT系、コンサルティング、商社、消費財、輸入販売等様々な業種から人事関係のお仕事の方が6割、その他のお仕事の方が4割程度です。人事関係といっても必ずしも制度などを担当している方ではなく、各個人が知る範囲でということでお応えいただきました。

質問1:
オフィス以外の場所で働く場所はありますか?あればどのような所ですか? 

  • テレワーク自体がまだ導入されていない…
  • 事前届出の上自宅か社内のフリースペース
  • 条件付き届け出制回数制限あり、基本自宅
  • 職種制限ありで育児従事の女性のみ、基本自宅のみ
  • グループ企業の事業所のみで職種制限と上司承認必要
  • 基本どこでも仕事をしてよいが、守るべき事項あり

質問2:
会社のルール(制度)はありますか?どのようなルールですか?

  • ルールは特にないが、連絡がとれるようにすること
  • 業務とその他を分ける環境があること スタート時は上司に連絡、基本自宅
  • 勤怠は事前申請、予定表公開、チャットシステムを常時ON、紙資料の持ち出し禁止、原則週1が基本ルールだが最終的には上司が判断する
  • 上司が認めれば、特にルールはなし
  • 社内のシステムにアクセスできる環境のみ
  • 基本どこでも、本人の身の安全がとれること

質問3:

どんなサテライトオフィスがあれば働いてみたいですか? どんな機能や新しい価値があれば企業の方が活用しやすいでしょうか? 

  • マインドフルネスな環境 自然の海、山、森があれば尚良し
  • 電話会議用の個室やブースがあること、これがないところが多くて結局自宅になってしまう
  • 美味しいコーヒーがあること、そして適度な緊張感
  • プライバシーが守られる空間 清潔な給湯室
  • 会社と同じようなIT機器があること、リフレッシュできる施設を希望
  • 気分転換ができるような散歩コース 

 これらの意見をまとめ、以下のようなスライドでご紹介しました。

 

 

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今回の会議でご覧いただいた資料がこちらです。テレワークの導入ステップは、
各企業の目的によってタイプと段階があり、「働く場」もそれに従って変化します。

育児従事社員や通勤時間の軽減等、比較的「弱者救済」といった視点で通勤などの負担を減らそうとする場合や、セキュリティ確保に強い保守意識が向く場合は、やはり社内アクセス圏内に限られます。

一方、もうその部分は乗り越えた上で、より個人の生産性向上や、価値観や働き方の個性に任せようという視点の場合は、会社外に出ていくことになる傾向があるようです。


今回事前にお話をうかがった中でも、「声はあがってるけど、まだ他社動向みながら検討中、、、」という企業もあれば、「社員個人が働く時間も場所も決めて、上司がOKすれば経費精算可能」という会社もあり、

現在テレワーク自体を他社の動向を見ながらまだ「検討中」という企業もある一方、
社員個人が上司と相談しながら働く時間も場所も選択し成果にコミットするという
企業もあるのが実情なようです。

【テレワークってどこからどこまで?】

ここからは、「会議」後に私がまとめたものです。

テレワークにもいくつかのタイプがあります。今回弊社で集めたデータ、およびこれまでのコンサルティング経験から、テレワークを以下4つのタイプと段階に区切りました。

 A: 在宅勤務(自宅で会社のネットワークとつないで仕事をする)
 B: 社内モバイルワーク(自社内、または系列企業のリソース内を対象に、自宅に近い事業所等で会社とのネットワークにアクセスして仕事をする)
 C: 社外モバイルワーク(カフェ等の公共の場を対象に、仕事現場のアクセスしやすいとこで仕事をする)
 D: サテライトオフィス(仕事場所としての機能を備えた社外の場所で仕事をする) 

 

テレワークといっても、企業外に出る1つのステップとして”決められた席”から社内の他のフロアやスペースに移ることも、テレワークとして定義されている企業もあります。上記のA~Dは、このステップも含めて大別しています。

大別の軸は2つあり、1つは社内か社外かです。企業内のネットワークにアクセスが容易な社内か、または自宅でそれを実現またはか、または場所”の軸です。制約のある社員を他の社員と同じように働ける環境として自宅で社内ネットワークとのアクセスを可能にして仕事をするケースです。ワーキングマザーの在宅勤務や、通勤時間軽減を目的とした近隣の事業所等で仕事をする場合等が例にあたります。または、リフレッシュのために自分の席を離れ、社内のカフェ等でミーティングをしたり集中する時間をもつことも例のひとつにあげられます。多くの場合、社内アクセスとの連動により「社員がどこにいるか」は常に把握されており、上長の管理下にあります。

もう一方の軸は、目的を大きく2つに大別している軸です。制約のある社員への救済支援、弱者救済や福利厚生的な目的(例えば、子育てや介護中の社員への施策)、もう一方は、とにかく生産性の向上のための支援(例えば徹底的に個人が心地よい働く時間や場所の選択が自らできる)ことへの軸です。この軸にある「徹底的な社員の生産性向上」はまだ多くの企業が未経験なタイプです。実際にこのタイプを制度化している企業はまだまだ少数ですが、今回の調査からも少しずつ増え、またはこのゾーンを目指している組織があることも分かりました。

この4つを図にまとめ、それぞれのメリット/デメリットをまとめたものがこちらです。

 

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 【そうはいってもセキュリティ】
今回の調査でも、数社の人事ご担当が現在挑戦・模索している段階と答えたのがDタイプの働き方への挑戦でした。今回、実際にDタイプ、またはDに近い働き方施策を進めている企業の方からもヒアリングし、以下3つのポイントがあることがわかりました。また、他のタイプについても、やはり以下の3つは導入する上でのポイントとなることが理解できます。

1) 企業セキュリティの確保

企業情報のセキュリティをどう確保するか。具体的には紙でのプリントアウトを制限する、プリント自体を制限・禁止する、仕事をする場所を制限する等の具体策が適用されています。

2) 社員への教育/テレワークリタラシー

いくらしくみや制度を整えても、キーとなるのはヒトの言動と周囲との関係によります。会社価値観や行動規範の浸透と倫理的な行動規範をどう守っていくか、教育や伝える機会を定期的にしていくことが大切なポイントの一つとなります。テレワーク上司やチームとの連絡をとるための自律的なコミュニケーションをとれることがテレワーク許可を得る一つの指標としている会社もありました。

3) 社員の安全確保
会社情報のセキュリティ確保と同時に、社員が外に出る=社員自身の安全確保の課題もあります。ここも、非常時対策も含め、社員の頻度高いコミュニケーションや倫理観も求められる部分の一つです。

 

各社では、プリントアウト禁止や、契約箇所以外で業務を避けるなど、様々な措置を講じています。ただ、ルール化はある意味いたちごっこ的な部分は否めず、最終的には自律x自立、そして倫理観xプロ意識をもった社員をどう醸成していくかに他ならないでしょう。また自立x自律社員の育成だけでなく、企業としてのスタンスも問われます。働き方に斬新なしくみを打ち出したことで知られるユニリーバ・ジャパン・ホールディングスの取締役 人事総務本部長の島田氏の言葉を借りれば「心配から信頼」へのシフトがパラダイム転換になるようです。

参考→ ユニリーバ・ジャパン、新人事制度「WAA」を導入 | ニュース&メディア | ユニリーバ・ジャパン

働き方改革は労働時間管理だけにあらず】
「会社にとって何のメリットも感じない…」先日ご一緒した企業の人事担当者の方がテレワークについておっしゃった言葉です。会社に来ることが当たり前で、朝8時からのミーティングが当たり前、ランチは会社の同僚ととること、終業後にも電話会議が入り、夜まで会議もある、、、、会社以外でこれをやるなんて、到底考えられないし、このやり方で業績を上げ、競争力をつけてきた。「社会の流れとは逆行していることは分かっているし、社員からも自宅で仕事をしたいとか、家に早く帰りづらいと言われる。人事としても何とかしたいけど、、、」と。

働き方改革」としては、この数年で’時間’という「働く量(時間)」に焦点があがっています。時短、フレックス、そして残業規制等について、諸外国と比較して長めの労働時間を減らすことに躍起になっています。もちろん、この量の調整は衛生要因として必要なものです。長年企業の人事施施策を支援してきた私としては、本当の意味で「働き方」に目をむけるのなら「働く質」に視点を転換させる時期に来ていると考えています。

では働く質はどう上げるか? 

「仕事を再定義する」私はここからスタートすべきと考えています。私(たち)の仕事は、誰に向けて、どんなサービスや製品を、どんな時間軸で届けるのか?顧客は変化するか?先手を打ってやることはあるか? 等、これらを今一度考えた上でこの仕事をする最適な「働き方」を選択する。このうちの一つの視点が’働く場所’、そして”How: どんな風に仕事をしていきたいか?”への解です。そして、働く時間や場所は企業主導である程度しくみ化や制度化が可能ですが、How:どんな風に働きたい? については、社員個人で違いがある。ある人は朝早い時間に集中して企画仕事を進めることで一番成果が出る人もいれば、どんなに朝型がはやっても夜が自分の時間という人もいる。運動してからの方が集中力があがる人もいれば、食事の時間や内容によって仕事の成果に差が出る人もいる。


【自分が一番生産性高くなる環境は自分で選ぶ】
真の意味での生産性の高い「働き方改革」を目指すなら、私はまず「仕事」を定義し、働き方を選択することが大切だと思っています。働くは「量」だけでなく「質」への視点転換も必要です。労働時間を選択できるようになりつつある現在、次に私達が選択すべきは「働く場や環境」と「どう働きたいか」の選択です。もちろん、セキュリティや安全の確保等会社としても整備しなければならない課題はありますが、「自分の生産性が高くなる場所はどこか」「どう働いたら自分は成果をだせるのか」は自分自身で体感しながら見つけ出していくべきでしょう。つまり、会社がいくら制度を整えてても、最終的には自分からどう発信していけるのか、これが問われるのかと。「ここでこんな風に仕事をすることで、私の生産性は確実に上がる!」と。

会社が社員を想って決める様々なルールや決め事の選択がどんどん広がる流れの中、会社が決めるルールや制度をまつだけでなく、自らが自らの生産性向上に向けて発する!これが真の「働き方改革」につながるかと信じています。

 

今回の会議では時間的にご紹介できなかった「鎌倉サテライトオフィスの一日」をご紹介します。こんな風に過ごしていただけるといいなという期待をこめて。

鎌倉で働く サテライトオフィスの一日

 

今回の会議参加からは、本当にたくさんのことを学ばせていただきました。何より、短い時間にもかかわらず取材のご協力をいただきました各社の皆さまには心よりお礼申し上げます!お陰でたくさんの情報と本音のご意見をいただき、大変実のある「会議」となりましこと、あらためて報告いたします。

 

次回のブログでは、「理想のサテライトオフィス」についていただいたご意見、そして鎌倉の査定ライトオフィスについて、ご紹介します!

 

サテライトオフィスツアーのお知らせ!】
「で、実際に鎌倉ってどんなサテライトオフィスあるの?」にお応えして、5月以降にサテライトオフィスツアーを企画しています。今じゃないけど検討しておきたい人事のご担当者様、新しい働き方を模索している個人事業主の方、そして何より鎌倉が好き!という方、ぜひご参加下さいませ。
詳細が決まり次第、こちらのHPなどで応募いたします!

 

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