「うちの会社、制度も人も悪くないのに、なんだか元気がない」
最近、そんな声をあちこちの企業で聞きます。
採用も教育も制度も整っている。
けれど、会議室の空気はどこか静かで、
“やらされ感”が漂っている——。
その違和感の正体を探っていくと、
いつも見えてくるのが「感情の置き去り」です。
■制度や仕組みは整っている。でも、”心の声”が置き去り
コーンフェリー社の最新レポート
「The Perils of Deprioritizing EQ(EQを軽視することの危険性)」
The Perils of Deprioritizing EQ
によると、世界の経営者の約70%が
「今後3年で最も重要なのはAI・技術スキル」と回答しています。
一方、「感情知性(EQ)」を優先すべきと答えたのは4割未満。
「従業員エンゲージメント」を重視したのは、わずか2割にとどまりました。
技術投資や制度設計に注力することは、もちろん間違っていません。
けれど、“感情”という見えない基盤を軽視すると、組織の温度が下がり、
「人が動かない」「信頼が生まれない」状態に陥ってしまうのです。
■EQ導入の現場からー”感情に気づく”ことでチームが変わる
私たちアイズプラスが支援している企業では、
「制度は整っているのに、なぜかチームが元気がない」
というケースからEQに着目する経営者が増えています。
EQ導入の第一歩として行うのは、“感情に気づく”ワークショップ。
管理職とメンバーが一緒に、MoodMeterなどを使い
「最近、仕事でどんな感情を感じたか」
を共有するセッションからスタートしています。
最初のセッションでは、みんな少しぎこちない表情でした。
「感情を話すなんて恥ずかしい」「何を言えばいいの?」
そんな戸惑いが漂っていました。
でも、一人のマネジャーが静かに口を開いた瞬間、
空気が変わりました。
「実は最近、チームの成果を出さなきゃと焦ってばかりで、
みんなの顔をちゃんと見ていなかった気がします。」
その言葉に、周囲の表情が緩み、
「わかります」「自分もです」と、対話が生まれました。
EQとは、こうした“人の温度を取り戻す技術”なのです。
その言葉をきっかけに、メンバーが次々と自分の
“感じていたこと”を言葉にし始めたのです。すると、
-
自分と相手の理解からメンバー間の理解が深まり、
-
会議で少しずつ自分の意見が出るようになり、
-
チーム全体を見る眼ができ、一体感が戻ってきた。
「仕組みを変えずに、感情の共有をしただけで
こんなに空気が変わるんですね」
と経営者が語ってくれました。
■EQはソフトスキルを超えて、”組織を動かす力”
Korn Ferryの調査は、こうも警鐘を鳴らしています。
「技術的スキルとEQ(感情知性)は相反するものではなく、
お互いを高め合う関係にある」
AIや制度が進化するほど、人の感情を扱う力(EQ)が求められます。
なぜなら、不確実かつ変化の多い時代には「不安」「抵抗」「葛藤」と
いった感情が常に動くものであり、EQは、これらの感情のメカニズムを知り、
それを“見える化し、扱える力”です。
たとえば、EQを経営に取り入れた企業ではこんな変化が生まれています。
| 取り組み | 変化の兆し |
|---|---|
| 「感情チェックイン」から始まる会議 | 会議冒頭に1分、「今どんな気持ちか」を話す。発言量と共感が増えた |
| 1on1で“気持ち”をテーマにした質問を導入 | 「最近、どんな瞬間に充実を感じた?」など。部下の動機や価値観が明確に |
| EQワークを管理職研修に組み込む | 指示中心のマネジメントから、対話中心のリーダーシップへ |
こうした取り組みを通じて、“感情を扱える組織”がどんどんと生まれ始めています。
■AI導入が進む今こそ、リーダーに求められるのは「AI x EI x Unlearning」
私は以前のブログでこんな記事を書きました
AIを活かすには、
AI(Artificial Intelligence) ×
EI(Emotional Intelligence) ×
Unlearning(学びほぐし)
AIで効率的にスピードを上げ、
EIで共感的に人をつなぎ、
Unlearningで古い前提を手放して創造を続ける。
このバランスこそが、これからの“しなやかな組織”の要です。
感情は組織の未来をデザインする
感情を扱う組織は、決して“ぬるい組織”ではありません。
むしろ、感情を見方にできる最も強いチームです。
今日、あなたのチームでも、たった5分でいい。
会議の前に「今どんな気持ち?」と聞いてみてください。
その一言が、組織を温める最初の火になります。
少し立ち止まり、自分やチームの「心の温度」
を確かめてみてください。
その小さな気づきが、組織をもう一度“人が動く場”
に変えていく第一歩になります。
