日々是Is'+ (アイズプラス代表 池照ブログ)

Is'+の視点による”心豊かに働くをデザインする”+もろもろについての徒然 ver.1

AIに翻弄される人、AIを使いこなす人。その差を生むのは「EQ」

「AI時代のEQ」というテーマが増えた一年

今年に入ってから、「AI時代のEQ」をテーマにしたご依頼が本当に増えました。組織開発プロジェクト、企業研修、講演、大学の授業。どの現場でも、AIとどう向き合えばいいのかという問いが、静かに、でも確実に広がっているのを感じます。私自身もその当事者の一人として、毎回ワクワクしながら取り組んでいます。

AIとEQ

調査が示した「EQとAI利用頻度は無関係」

米国でEQプログラムを提供するLEADxのCEO、ケビン・クルーズ氏が、興味深い調査結果*1を公表しています。働く人993名のEQを測定し、あわせて「AIを毎日使うか」「毎週使うか」を尋ねたものです。

結果は、EQとAIの利用頻度のあいだに、意味のある関係は見られないというものでした(毎日の利用 r=−0.03、毎週の利用 r=−0.00)。AIを使うかどうかは、職種や業界、AIを使える環境、組織からの期待といった要因のほうが大きいと考えられています。

差が出るのは「量」ではなく「使い方」

では、EQはAIと無関係なのでしょうか。クルーズ氏自身は、EQはAIの効果を何倍にも高める「フォース・マルチプライヤー」になり得ると述べています。EQの高い人は、AIをより思慮深く使えるはずだ、という見立てです。

逆に、EQが低いままAIを多用すると、生成AIの誤情報を見落としたり、確認が甘くなったりする危険がある。同記事では、AIが原因の事実誤りを含む報告書をめぐって大手コンサルティング会社が問題視された事例も紹介されています*2。

現場で私が見てきたこと

この指摘は、私が各現場で感じていることと、ぴたりと重なります。

EQを活かすほど、AIのアウトプットの質は高まる。

EQを学んだ方々は、AIに問いを投げる「前」に立ち止まります。

  • 自分は、そもそもどうありたいのか
  • この資料を読む人に、どうなってほしいのか
  • この仕事を通じて、どんな変化を描いているのか

これらを描いたうえで問いを立てるから、AIの答えに翻弄されません。「それらしいけれど、私が届けたいのはこれじゃない」と見極め、問いを立て直せるのです。

AIは「何のために」を教えてくれない

一方、ゴールを描かずに問いを投げると、もっともらしい答えが出るたびに心が揺れ、気づけばAIのペースに巻き込まれてしまいます。

この差は、ITスキルの差ではありません。自分の感情や願いに気づき、届ける/巻き込む相手を想像し、望む未来を描く力、つまりEQの差です。日式EQがすべての中心に「ありたい姿」を置いているのも、そのためです。AIは答えを出してくれても、「何のために」は教えてくれません。

30秒の問いかけから始めよう

AIを使う前に、ほんの30秒でいいので自分に問いかけてみてください。

「私はこの仕事で、誰に、どうなってほしいんだろう?」
「この取り組みで、どんな世界をみたいんだろう?」
「これを見たお客さんに、どんな気持ちになってほしい?」

その一呼吸が、AIを"翻弄される相手"から"心強い相棒"に変えてくれるはずです。AIの時代だからこそ、心豊かに働くをデザインする力が、私たち一人ひとりに求められています。

👉『AI×EQ』を現場で実践する「職場のEQ活用のヒント」はこちら

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「うまく話さなきゃ」を手放すまで ――鎌倉FM【How do you feel?】67回目の気づき

「うまく話す」より「深く聴く」に気づくまで

鎌倉FM【How do you feel?】は6年目に入り、気づけば放送は67回を数えていました。毎回お越しくださるゲストの皆さん、番組を支えてくださる方々に、心から感謝しています。節目というわけではありませんが、このあたりで、あらためてラジオの活動について綴ってみたいと思います。

https://www.kamakurafm.co.jp/

■「コンサルティング会社が、ラジオ?」

「ラジオ番組をやりませんか?」とお声がけいただいたとき、正直に言えば、私はとっさに「コンサルティング会社がそんなこと……」と思いました。

背中を押してくれたのは、アイズプラスのメンバーでした。「より多くの方々に、EQの魅力を伝えてみたい」。その声を聞いて、まずはやってみるか!と始めたのが2021年4月のことです。

EQ(感情知性)は、研修や組織開発の場で語られることの多いスキルです。ですが、本来は、誰もが日々の暮らしや人生の選択の中で使っているもの。ビジネスだけでなく、私たちの人生に活かせるものとして伝えたい。その想いが、ラジオという場につながりました。

 

■実は、楽しめていなかった数年間

ここで告白すると、最初の数年、私はあまり番組を楽しめていませんでした。

理由ははっきりしています。「うまく話さなきゃ」「いいことを言わなきゃ」。そんなエゴが、いつも頭の片隅にあったのです。ゲストのお話を聴きながら、次に自分が何を言うかを考えている。今振り返ると、なんとももったいない時間の過ごし方でした。

変化を感じ始めたのは、昨年あたりからです。相手の話にただ集中して聴くことの心地よさを、少しずつ感じられるようになりました。EQを伝える仕事をしていながら、これを学ぶのに随分と時間がかかったものです。

 

■感情から、その人の魅力を再発見する

番組では、ステキな活動をされている方々をゲストにお迎えし、その活動の根っこにある「感情」についてうかがっています。何に心が動いて始めたのか。続ける中で、どんな気持ちと向き合ってきたのか。

聴くことに集中できるようになって、気づいたことがあります。毎回、私自身がその方の魅力を再発見しているのです。よく知っているつもりの方でも、感情の話になると、肩書きや実績からは見えなかった、その方らしさが立ち上がってきます。

ゲストの多くは、鎌倉にゆかりのある方々、または私たちが『感情を活かしている』と感じる方々にご協力いただいています。お寺のご住職、骨董店の店主、料理人、経営者、コーチ――。「鎌倉×感情を活かす」を軸に、働く人の数だけあるキャリアと感情の活かし方に触れてきました。

 

■鳩子の部屋と、アーカイブのこと

番組後半の「鳩子の部屋」では、鳩子ちゃんと鳩ばあの対話を通じて、日常でEQを活かすヒントをお届けしています。普段私たちが担当している大学教育の現場から、またはリスナーの方々からのリアルな質問などをベースに、毎回スクリプトを作成し、プロの俳優さんに鳩子ちゃんに音を入れていただいています。

また、放送はポッドキャストとしてアーカイブを残し、大学生の副教材としても活用しています。さまざまな大人が、自分の仕事と感情を率直に語る声は、これから社会に出る学生にとって何よりの生きた教材です。先日も、学生から「○○という仕事に就く人の本音が知れて良かった。」「お父さんと同じ仕事をしている人がいて、すごく興味がわいた」などのコメントがありました。

 

■これからも、聴くことから

67回を重ねて、ようやく「聴く」ことの入口に立てた気がしています。誰もがもつ「感情」をベースに、人を知るラジオ番組です。これからも、ゲストの皆さんの感情に耳を澄ませながら、一回一回を味わっていきたいと思います。

 

▼全てのアーカイブはこちらから
https://is-pluseq.com/podcast/

写真は、直近4ケ月ほどのゲストの皆さんとの収録現場写真とアーカイブURLです。ぜひお聴きください♪

7月放送ゲスト:鎌倉のFishバーガー屋さん MoreFish代表の岩淵さん

How do you feel? #64_more Fish! オーナー 岩渕史武さん - EQ+LAB.

8月ゲスト:世界をハッピーにするデザイン思考の中澤さん

How do you feel? #65_株式会社Ringfish 中澤雄一郎さん - EQ+LAB.

9月放送ゲスト: 経営xリーダーシップで次世代育成にとりくむ小杉さん

How do you feel? #66_合同会社THS経営組織研究所 代表社員 小杉 俊哉さん - EQ+LAB.

10月ゲスト:海の楽しさを伝える リビエラリゾートの新谷さん
(アーカイブは来月に発行予定です) 

 

言いたかった一言を、ひっこめた日|リーダーの表情と心理的安全性

「そういえば、表情って見ていなかったかも」

先日のワークショップで、あるリーダーの方がぽつりとつぶやいた一言です。

この秋は、毎年担当している京都大学医学部附属病院でのEQリーダーシップ、グローバル製薬・IT・メーカー企業での「AI時代のEQ」プログラム、そして先週は鎌倉市役所でのリーダー向け1on1研修と、現場が続いています。業種も立場も違うのに、いま皆さんの気づきが集中するのが「ノンバーバルスキル」、つまり表情です。

EQ検査の項目にある「ノンバーバルスキル」は、しぐさ・表情・視線など、言葉以外で感情を表現する度合いを指します。

ここで、よくいただく言葉があります。「これ、ビジネスに必要ですか?」「うちの会社は、表情を変えたところで成果に直結しませんよ」でも、これが大きく影響するのです。

■ 言いたかったことを、ひっこめた日

私自身の経験です。会社員時代、1on1の時間に、「今日こそ伝えよう!」と少しチャレンジングな提案をまとめて上司の部屋に入りました。ドアを開けて、上司の表情を見た瞬間に、準備していた言葉を思わずひっこめていました。上司は何も言っていません。ただ、その表情を見ただけで引っ込めてしまったのです。

皆さんにも、ありませんか? そしてもう一つ。自分が「ひっこめさせた側」だったことは、ないでしょうか。これは気のせいでも、気が弱いからでもありません。科学が裏づけています。

 

■ 表情は、勝手に伝わる

スウェーデンの心理学者ディンバーグらの実験(2000年)*1では、本人が「見た」と自覚できないほど一瞬だけ表情の写真を見せても、見た人の顔の筋肉が同じ表情の方向に反応しました。表情は、伝えようとしなくても伝わり、受け取ろうとしなくても受け取ってしまうものなのです。

 

■ 伝わった感情は、チームの成果を変える

組織行動学者バーセイドの研究(2002年)*2では、グループの中のたった一人の感情が全体に広がり、協力の度合いや成果の評価にまで影響することが示されました。「感情の伝染」と呼ばれる現象です。

 

■ オンラインでも同じことが起きている

2026年に学術誌『Acta Psychologica』に掲載された、実務者400人を対象とした研究では、画面越しのリーダーの表情が、メンバーの「言っても大丈夫」という安心感につながり、それがチームの成果につながるという関係が報告*3されています。

つまり、リーダーの表情ひとつが、メンバーが「言おうか迷った一言」を口にできるかどうかに影響する、大切な要素の一つなのです。あの日の私がひっこめた一言、誰かがひっこめた提案は、もしかしたら組織にとって大事な一言だったかもしれません。

 

■ 表情は誰のもの?

自分の顔は、自分では見えません。見ているのは、いつも相手です。

AIが言葉を整え、表情さえ分析する時代。だからこそ私たち人間には、相手の感情を想像し、自分の感情を適切に表現しながら、信頼関係を築く力が求められます。

まずは今日、会議の最初の10秒だけ、画面の中の自分の顔を見てみてください。そこに映っているのが、チームが毎日受け取っているメッセージです。表情は、私たちが意識して選択できる行動の一つです。

isplus1.hatenablog.com

 

 

■ 11月16日、表情を科学的に学ぶ会を開きます

普段何気なく見ている表情。その一瞬に、相手を理解するヒントが隠れているかもしれません。

11月16日のEQ学び会は「チームづくりに活かす微表情」がテーマ。講師は、株式会社空気を読むを科学する研究所の清水建二さん。一瞬だけ顔に現れる「微表情」の読み方と、チームづくりへの活かし方を学びます。清水さんはTVドラマの表情監修も手がける専門家。今話題のあのドラマの裏話も聞けるかも!

「そういえば最近、相手の表情をちゃんと見ていなかったかも」という方、ぜひご一緒しましょう!

 

▼詳細・お申し込み
https://isplus-eq-20261116.peatix.com/

isplus-eq-20261116.peatix.com

 

*1:Dimberg, U., Thunberg, M., & Elmehed, K. (2000). Unconscious facial reactions to emotional facial expressions. Psychological Science, 11(1), 86–89.

*2:Barsade, S. G. (2002). The ripple effect: Emotional contagion and its influence on group behavior. Administrative Science Quarterly, 47(4), 644–675.

*3:Emotional contagion in virtual leadership: A webcam-based study of expressivity, psychological safety, and team output. Acta Psychologica (2026). PMID: 41722218

その「?」、そのままにしないで。EQ+LAB.にAIチャットを設置しました

お陰さまで、アイズプラスでのEQ検査の提供数が7,000件を超えました。
多様な組織の皆さんと、EQをベースにしたリーダー育成や組織開発に取り組む日々。
今週も、行政の現場で、教育現場で、そして企業のリーダー育成の現場でと、EQをベースとした人材・組織開発に走り回っております。

■学びは「ワークショップの後」が本番

ワークショップは毎回高い評価をいただき、本当にありがたいことです。ただ、私がいつも気にかけているのは、その“後”のことです。

職場に戻ると、「あの話って、どういう意味だったっけ?」「自分のこのタイプ、どう活かせばいいんだろう?」と、小さな疑問が湧いてきます。でもその疑問は、たいてい忙しさの中で消えてしまう。
実はここが、学びが止まるかどうかの分かれ道なのです。

■いつでも、何度でも聞けるAIチャット

そこで、アイズプラスのサイト「EQ+LAB.」にAIチャットを設置しました。これまで受講者向けのEQ開発ツール内で限られた方だけが使っていたものを、どなたでも使えるように公開しています。

ベースになっているのは、私が20年間書き続けてきた記事やブログです。使ってくださった方から「まるで池照さんが話しているみたい!」という声もいただき、ちょっと照れくさいけれど、とても嬉しく思っています。

夜中でも移動中でも、思い立ったときに気軽に聞けます。「こんなこと聞いていいのかな?」というハードルを、できるだけ下げたかったのです。

 

■たとえば、こんな質問ができます

💬 性格がおとなしい・口数が少ないタイプでも、EQを高くすることはできますか?
回答はこんな風に出てきます→


その他、以下のような「よくある質問」もあります。
💬 感情的被影響性を高めるメリットは?
「感情的被影響性」は、EQI検査の素養名で、感情に影響を受けやすい度合いのことをいいます。EQ用語になるため、質問したい方が多い項目の一つです。

💬 EQはどのように測定できますか?
EQには多くのアセスメントが存在します。アイズプラスで実施できるアセスメントを紹介しています。

どれも、ワークショップでよくいただく質問です。特に冒頭の『おとなしいタイプでもEQを高められるか』は、『EQは社交的な人のもの』と思い込んでいる方に、ぜひ読んでいただきたい問いです。

「よくある質問」を眺めているだけでも、EQの理解が少しずつ深まっていくはずです。
ただし、これはあくまでAIによる回答です。以下の注釈もしっかりつけています。
※AIによる回答のため、内容が十分でない場合があります。個人情報や社外秘の情報は入力しないでください

 

■小さな「?」の解消が、継続的な開発になる

EQは、一度学んで終わりではありません。日々の中で育てていくものです。

疑問が湧く → 調べる → 職場で試す → また気づく。この小さなサイクルを回し続けることが、一人ひとりの「ありたい姿」に近づく一番の近道だと、私は考えています。

いま各社の事務局の皆さんと進めている「ピアグループ活動」が、仲間と学びを分かち合う“横のつながり”だとすれば、AIチャットは、一人でもいつでも立ち返れる“自分の伴走者”です。この両輪で、学びを続けられる環境をつくっていきます。

 

■まずは一つ、聞いてみてください

EQ検査やアイズプラスのプログラムを受講した方を想定していますが、どなたでもご利用いただけます。

最近気になっていること、ずっと引っかかっていたこと。どんなに小さな「?」でも大丈夫です。まずは一つ、話しかけてみてください♪

▼EQ+LAB. AIチャットはこちら https://is-pluseq.com/eq-ai-chat/



🏢設置にあたっては、マックスストーンの飯岡直樹さんとチームの皆さんに丁寧にサポートいただきました。ありがとうございました!
マックスストーン様→会社概要 - 株式会社マックスストーン

 






 

AIが「答え」を出す時代に、人は何を磨くのか ——令和8年版「労働経済白書」をEQの視点で読む

■「仕事がなくなる」のではなく、「求められる力が変わる」

厚生労働省から、令和8年版「労働経済の分析(労働経済白書)*1」が公表されました。
今年のテーマは「AI等技術革新が進む中での労働市場の現状と課題」です。

白書は、AIが大きな雇用減少をもたらしている証拠は現時点で確認されて
いない、としています。一方で、紹介されている2040年の推計では、
事務職が約440万人余剰となり、AI・ロボット等を利活用する人材は約340万人、
現場人材は約54万人不足する可能性が示されています。

「AI vs 人間」ではありません。
仕事の中身と、人に求められる力が入れ替わっていく、ということです。

■AIの効果を高めるのは、「人への投資」

私がいちばん目を留めたのは、ここです。

AIを使っている人のうち、企業の訓練と本人の学び直しの両方がある人ほど、
仕事の成果だけでなく、メンタルヘルスや職場の安全性まで「良くなった」
と答えています。

ところが、AI利用者のうち「企業から訓練の機会があった」と答えた人の
割合は、日本は26.7%。OECD平均の36.8%を下回っています。

AIの利用そのものも、使う「人」への投資も、日本はまだこれから。
これが日本の現在地のようです。

 

■「メタスキル」を動かすのは、感情

白書はもう一つ、「メタスキル」に注目しています。論理的思考力や
コミュニケーション能力など、特定の業務にとどまらない汎用的な力のことです。

ここで、先日のエピソードを一つ。
ある企業の経営陣へのコーチングでのことです。対話を重ねる中で、
お一人がこう気づかれました。
「スピードを重視するあまり、部下と向き合う時間をとっていなかった」
その方は、部下と向き合う時間を定期的にとることを決めました。
それから3ヶ月。「関係性が確実に変わった。結果的に、業績も高まった」
という嬉しいフィードバックをいただきました。

この方は、部下と向き合うことの大切さを知らなかったわけではありません。
対話の力も、十分にお持ちでした。ただ、使えていなかったのです。
つまり、力を「持っている(知っている)」ことと、「使える(使えた)」
ことは別なのです。

変化の起点は、新しい知識ではありませんでした。
「急ぐあまり、向き合えていない自分」に気づいたこと。
その気づきを、行動に変えたことです。

これがEQ(感情知性)です。自分と相手の感情に気づき、理解し、
活かす力です。私はEQを、メタスキルそのものというより、持っている力を
「使える力」に変える基盤だと捉えています。

■AI時代のEQは、「自分を知る」ことから

AIは「正解を出す力」をどんどん高めています。

だからこそ人には、何を問うか。どう判断するか。誰と、どう一緒にやるか。
この3つが残ります。そしてどれも、感情と切り離せません。

少しだけ、ご自身に問いかけてみませんか。

・いま、どんな気持ちか。
・その気持ちは、何を教えてくれているか。
・本当は、どうありたいのか。

この問いの答えは、AIの中にはありません。自分の中にしかない。
私はこれを、AI時代のリーダーシップの最初の一歩だと考えています。

 

■「人への投資」から、「感情への投資」へ

企業はこれまで、知識・技術・経験に投資してきました。
では、そこで働く人の「感情」はどうでしょうか。

安心して意見が言える。仕事に意味を感じる。仲間を信頼し、
挑戦してみようと思える。目には見えませんが、こうした感情が、
判断と行動と関係性を、そして組織の成果を動かしています。

一人ひとりの感情という「資源」を、EQで認識し、活かす。
それが日々の関わりの中で「資産」として蓄積され、やがて組織の
価値を生む「資本」になる。

感情資源から、感情資産へ。そして、感情資本へ。
私はこれを「感情資本経営」と呼んでいます。

私たちはこれから、人のどんな力に投資するのでしょうか。

20年間、7,000件を超えるEQ検査に向き合ってきて、確信している
ことがあります。EQは、鍛えられる。
そして、人が変わると、組織は変わります。

AI時代とは、「人間だからこそ生み出せる価値」を問い直す時代。
その問いを、これからも皆さんと一緒に考えていきたいと思います。



Z世代は、リーダーになりたくないのか?――教室から考える「燃え尽きないリーダー」の育成

教員を担当する山野美容芸術短期大学で、
今年度の「美道プロジェクト」の授業が始まりました。

オンラインの画面には、夏休み明けの元気で素直な1年生たち。多くの学生が10代(Generation Z)に相当する若者です。初回のオリエンテーションで初めて触れる「感情チャート=ムードメーター」から「感情ってこんなにあるんだー」「気持ちを色で表すのが面白い」と、のびのびした声が上がります。この素直さと感情の豊かさは、毎年この授業で出会う宝物です。

■「6%」という数字

一つ、気になるデータがあります。デロイトが44か国・2万2千人超を対象
に行った「2026 Gen Z and Millennial Survey*1」では、リーダーになることをキャリアの第一目標に挙げたZ世代・ミレニアル世代はわずか6%でした。理由の上位は「ストレスや燃え尽き」「責任が重すぎる」(各50%)と「ワークライフバランスが取れない」(41%)です。

ところが同じ調査で、Z世代の76%は「いつかは経営層を目指したい」、80%は「リーダーや管理職に関心がある」と答えています。つまり彼らは、リーダーになりたくないわけではありません。「疲れ果てたリーダー」になりたくないのです。

■感情を、ひとりで抱えている

調査からは、別の課題も見えてきます。Z世代の約3人に1人が「ほとんどいつも不安やストレスを感じている」と答え、約半数が燃え尽きを感じています。仕事のストレスへの対処にAIを使う人も67%にのぼります。ネガティブな感情やストレスを周囲に見せず、一人で処理しようとしている姿が浮かびます。
その一方で、96%は「仕事の意義」を大切にしています。

■燃え尽きは、リーダーの宿命ではない

希望の持てるデータもあります。
すでに上級リーダー職にあるZ世代・ミレニアル世代は、若手の職位にある人よりも、メンタルヘルスやワークライフバランスが良好だと答える傾向がありました。デロイトも、リーダー職を「際限なく要求を背負う役割」から「責任を分かち合い、周りの力を引き出す役割」へ再設計することを提言しています。


また、職場に親しい友人がいるZ世代は、5年以上働き続けたいと答える割合が48%で、
いない人(33%)を大きく上回りました。感情と人とのつながりが、働き続ける力の
源になっているのです。

■企業と大学に問われていること

課題は、若者の意欲ではありません。管理職であるリーダーのあり方と、そこに至るまでの準備の仕方です。自分の感情に気づき、言葉にし、周りに頼る。この力をリーダーや管理職になってから初めて学ぶのではなく、社会に出る前から、そして入社後も継続して気づき、トレーニングできる環境があること。それが、組織のリーダーパイプラインを太くし、燃え尽きないリーダーを育てる土台になると考えています。

■だから、美容・芸術の世界からリーダーを

美容や人のケアの仕事は、目の前の人の心に寄り添う仕事です。
サロンでもチームでも、感情と向き合う力なしには成り立ちません。
だからこそ私たちは、あえてこの業界で活躍するリーダーの輩出を目指しています。
そのために、必修科目「美道プロジェクト」でEQ(感情知性)を学ぶ。EQとは、自分の感情に気づいて受けとめ、よい方向に活かす力です。相手の感情を読み取り、関係を育てる力でもあります。

EQはセンスではなく、練習で伸ばせるスキルです。
EQを活かせれば、リーダーは「我慢して背負う人」から「自分も周りも元気にする人」に変わります。燃え尽きないリーダーシップこそ、Z世代が本当に求めているリーダー像ではないでしょうか。

■美道の「精神美」とEQ

山野の「美道」は、髪・顔・装いに加えて、健康美と精神美を大切にしており、内面から美しく生きる力は、EQが目指すものとぴったり重なります。「感情ってこんなにあるんだー」という驚きは、自分を知る第一歩です。その一歩が、やがて誰かを元気にするリーダーシップにつながっている。そう信じて、今年も学生たちと一緒に走り出します。


■ 企業の人材育成・大学の教育現場に関わる皆さまへ

若手がリーダーを避ける背景にあるのは、「意欲の欠如」ではなく
「ひとりで抱え込み、疲れ果てることへの不安」です。

  • 企業の人事・リーダー育成ご担当の方へ

    若手が孤立せず、感情を共有しながらチームを巻き込む「燃え尽きない
    リーダーシップ・EQ開発」の研修や組織づくりについて、自社の課題に
    合わせたアプローチをご提案しています。

  • 大学・教育機関でキャリア支援・初年次教育に携わる教職員の方へ

    社会に出る前の学生が自己理解を深め、レジリエンスを養うための
    「感情知性(EQ)を取り入れたカリキュラム・講義設計」の導入事例や
    連携についてご紹介が可能です。

「若手の力を引き出し、長く活躍できる土台をつくりたい」とお考えの際は、
ぜひお気軽にアイズプラスまでご相談・お問合せください。

👉 アイズプラスへのお問い合わせ・ご相談はこちら



山野美容芸術短期大学 美道プロジェクト

美道プロジェクト | 学びについて | 美容を学校で学ぶなら 山野美容芸術短期大学



 

「言わなくても分かるでしょ」が通じない職場で

先日、ある企業の方とこんな話をしました。

「最近の若手は学歴も高く、知識もある。
でも、こちらが言ったことを期待通りにはやらない、何度言っても。」
実は似たような話を、今月に入って数名の方からうかがっています。

これは本当に、若手の能力の問題なのでしょうか。

2026年5月、Job総研(パーソルキャリア)が、働く男女421人に行った調査*1
があります(若手に限った調査ではありません)。

部下側の困りごととして多かったのは「指示が曖昧」(43.2%)。
一方、上司側は「主体性を感じにくい」(46.3%)、
「指示待ちが多い」(45.3%)を挙げています。
さらに、部下が上司から言われたくない言葉の1位は
「言わなくても分かるでしょ」(46.8%)でした。

上司は「動いてくれない」と感じ、
部下は「何を求められているのか分からない」と感じている。
同じ指示を挟んで、見えている景色が違うのです。

私は、その一因が能力ではなく、
仕事を理解するための「情報」が見えにくくなっていることにあるの
ではないかと考えています。


■「仕事のテンパり」も、大切な仕事の情報だった

私にも、忘れられない朝があります。若手社員だった頃、
いつも冷静で温厚な先輩が、深刻な焦りを浮かべていました。
何も説明されていないのに、私は「ただごとではない」と感じ、
自然とアンテナを立てていました。後になって、その日は会社が
大きな有事を抱えていたと知り、私自身も訴訟問題などを担当
することになります。

言葉がなくても、先輩の表情が「これは重大だ」と教えてくれていたのです。

そこで失われやすいものの一つが、周囲の人が働いている姿です。
いまはリモートやハイブリッドで働くことが当たり前になり、その「表情」
に触れる機会が減りました。

以前なら、隣の席の先輩が焦っている姿を見て、

「これは急いだほうがいいんだな」
「この仕事、かなり重要なんだな」

と、言葉にされなくても感じ取ることができました。電話口で必死に対応する
先輩。会議前に何度も資料を確認する上司。締切直前の、少し張りつめた
チームの空気。

こうした「先輩のテンパり」も、すべて仕事を学ぶための情報だったのです。

 

■「察する」を支えていた前提が、変わった

日本の職場は、言葉にされない部分を読み取ることを前提に成り立って
きました。文化人類学者エドワード・T・ホールが示した
「高文脈(ハイコンテクスト)」という考え方があります。
日本は、言葉そのものだけでなく、関係性や状況、非言語的な情報から意味
を読み取る傾向の強い文化として論じられてきました。
「言わなくても分かるでしょ」が通じたのは、同じ場所で、同じ経験を重ね、
似た価値観を持っていることが前提だったからです。

いまは、働く場所も、価値観も違います。前提が変わったのに、
「察してほしい」だけが残っている。若手の察する力が落ちたのではなく、
察するための材料が減ったのです。

材料が減ったなら、意識して言葉にして補うしかありません。

 

■FES:事実に、感情と提案を添える

そこで私が大切にしているのが、FESです。

 F=Fact(事実):何を、いつまでに。そしてなぜ必要か、誰のためか
 E=Emotion(感情):その事実に対して、自分が感じていること
 S=Solution / Suggestion(解決策・提案):では、どうするか

たとえば、

「この資料を明日の午前中までに仕上げてほしい」

だけでなく、

「明日、お客様との大事な打ち合わせがあって、
 この資料が必要なんです(Fact)。先方の期待が高くて、
 私も少し緊張しています(Emotion)。だから、
 今日中に一度ドラフトを見せてもらえると助かります(Solution)」

ここまで伝えると、若手は「何を、いつまでに」だけでなく、
なぜそれをするのか、相手が何を感じているのか、自分はどう動けばいいのか
まで理解できます。

私は、EQとは感情をコントロールする技術ではなく、感情という情報を
仕事に活かす力だと考えています。「焦っている」「不安だ」「期待している」
といった感情には、その人が今、何を大切にしているのかが含まれて
いるからです。

ただし、Emotionは、相手を動かすための圧力でも、弱みの告白でもありません。
状況の「温度」を伝える情報です。主語は「私」。「あなたのせいで焦っている」
ではなく、「私はこう感じている」を伝えます。

■若手からも、FESを

FESは、上司から部下への一方通行ではありません。
若手からも、
 「ここまでは理解できています(Fact)。
 でも、この部分は少し不安です(Emotion)。
 先輩ならどう考えるか教えてください(Suggestion)」

と伝えてみる。同じ場所にいなくても、感情が言葉になれば、人は相手の
状況を想像できます。そこに共感が生まれ、次に必要な一手も見えてきます。

 

■明日からの一歩

「見ればわかる」が通じない職場になったからこそ、
「感じていることまで、言葉にする」。

次に誰かに何かを頼むとき、いつもの依頼に「なぜ必要か」と
「私はこう感じている」を一文ずつ足してみてください。
それだけで、仕事の意味は大きく伝わりやすくなります。

ぜひ一緒に、互いの想いが通じる職場づくりを、進めていきましょう。

 

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