日々是Is'+ (アイズプラス代表 池照ブログ)

Is'+の視点による”心豊かに働くをデザインする”+もろもろについての徒然 ver.1

【ATD台湾2026|Vol.3】AIが人を育てる時代。私たち人材開発の専門家は何をする?

私たち人材開発の専門家は、これから何を担うのか?

(ブログ内容をAIがイラストにしてくれました。私をかなりかわいく描いてくれてますね、忖度かな)

AIが一人ひとりに必要な学びを見つけ、最適なプログラムを提案し、習熟まで支援してくれるとしたら、私たち人材開発の専門家は、これから何を担うのでしょうか?

研修を企画すること? 教えること? 人の成長を支援すること?

そもそも、これまで当たり前だと思ってきた「人材開発」のあり方そのものを、問い直す時期に来ているのかもしれません。

ATD Asia Pacific Conference 2026、2日目。LenovoのグローバルL&D責任者、Lee Huang Jan氏のセッションは、そんな問いを私に投げかけてくれました。

AIを活用するのではなく、AIを前提に設計する

Lenovoが進めているのは、既存の研修をAIで効率化することではありません。
AIがあることを前提に、人材開発の仕組みそのものをフルリデザインすること。

社員一人ひとりの役割、スキル、上司からのフィードバックなどをAIが分析し、必要な学びを提案する。年に一度研修計画を立て、全員が同じプログラムを受講するのではなく、必要なときに、必要な人へ、必要な学びを届ける。

AIによるシミュレーションやコーチングも活用し、社員の年間学習時間は7時間から13時間へと増加したそうです。「研修を受ける」から「仕事の中で学び続ける」へ。学びのあり方が大きく変わろうとしています。

個の知恵をAIで編み直す「Team AI」

特に私が刺激を受けたのが「Team AI」というアプローチです。

これまで研修プログラムの開発は、担当者それぞれの経験や専門知識、アイデアを持ち寄って進めてきました。最近では個人でAIを活用することも増えていますが、それだけでは個人の知恵の延長にとどまります。

Lenovoでは、複数の担当者の知恵や情報をAIで統合し、チームとしてよりよいプログラムを設計する仕組みを進めているとのこと。

個の知恵をAIで編み直し、選択肢を的確に並べ、学びの習熟と成長を加速させる。これには、人材開発に携わる者として、なんとも心地よい危機感を覚えました。これまで培ってきた経験や専門性も、その活かし方自体を変える必要があるのではないか。そんな刺激を受けたのです。

ROIからROFへ。未来への投資をどう語る?

もう一つ、私の心に残ったのが「ROF(Return on the Future)」という考え方です。

研修の成果を従来のROI(投資対効果)だけで測るのではなく、ROE(社員の能力向上や成長)や、ROF(企業の未来に生み出す価値)という視点から捉える。

例えば、社員の成長が新たな顧客との関係づくりにつながったか。新しい製品やサービスが生まれたか。優秀な人材が集まり、働き続けたいと思える組織になったかどうか。

人材開発への投資は、企業の未来にどんな価値を生み出しているのか?

人材開発の成果を、研修の満足度や受講時間だけでなく、組織の未来に生み出す価値で捉える。これは、現在私がクライアントとともに進めているEQや感情資本経営の導入とも重なります。人と人との信頼が深まったことで、新たな挑戦が生まれる。共感や対話が増えたことで、異なる知恵が結びつく。こうした変化を、経営にとっての価値としてどう可視化していくのか。

ROFは、その可能性を考える一つの視点になると感じました。

一方で、気になることがあります。ROFという考え方は、日本の経営陣にどれだけ響くのでしょうか。ぜひ、私自身も日本企業の経営者の皆さんに問いかけ、対話を重ねてみたいと思いました。

AI時代、人間だからこそ生み出せる価値とは?

人材開発は、研修を提供する仕事から、組織の未来をともにつくる仕事へ。AIが進化すればするほど、私たちは「何ができるか」だけでなく、「何を大切にしたいのか」を問われるようになるのかもしれません。

人の感情や可能性に向き合ってきた私自身も、これまでの経験や専門性をどう活かし直すのか。まだまだ学ぶこと、挑戦することがたくさんありそうです。

なんとも心地よい危機感。そして、それ以上のワクワク。そんな刺激をもらったLenovoのセッションでした。

 

今回も、会場は台北国際会議中心(TICC / Taipei International Convention Center)、カンファレンス特有かもしれませんが、会議室がとっても寒かった~

台湾ATDは、毎日お弁当付きなのも嬉しい。ポークかチキン、ベジタリアン向けも選べます。みんなでお弁当食べながら、それぞれが感じたことを対話する時間が、とても豊かでした。台湾のお弁当は、野菜も温かくて美味~。



 

【ATD台湾2026|Vol.2】AI時代の人材育成は、現場から始まる

「研修」からではなく「現場」から考える

(ブログ内容をAIにイラストにしてもらいました)

企業はなぜ、人材育成に多くの時間と費用をかけても、現場の行動がなかなか変わらないのでしょうか?

台湾で開催されたATD Asia Pacific Conference 2026。数多くのセッションに参加した中で、上記の問いのヒントにつながる講演に、思わず何度も「うんうん!」とうなずきながら聴いていました。アストラゼネカでグローバルの人材開発を率いるGeoff Brockway(ジェフ・ブロックウェイ)さんのセッションです。

テーマは「DESIGNING THE FUTURE-READY ORGANISATION」。AI時代に、人とテクノロジーの力をどう組み合わせ、組織の価値につなげていくか。

なかでも強く共感したのが、「コンテンツからではなく、仕事から始めよう(Start with work, not with content)」というメッセージです。研修を企画するとき、私たちはつい「何を教えるか」「どんなプログラムをつくるか」から考えがちです。でも、本当に大切なのは、その前にある問い。

「現場では何が起きている?」
「何を変えたい?」
「そのために、人は何ができるようになる必要がある?」

そもそも研修が解決策ではないことだってある。これは、私自身が人事や組織開発に関わる中で、ずっと大切にしてきた視点です。

AI時代、EQは「あったらいい」ではなく「必要な力」

もう一つ、私が大きくうなずいたのが、AI時代に必要な能力についてのお話です。ジェフさんは、AIリテラシーなどの技術的な能力(Technical Literacy)と、人間が発揮する能力(Human Capabilities)の両方を育てる必要性を示しました。

人間の能力として挙げられたのは、判断力、批判的思考、好奇心、協働力、倫理観、そしてEmotional Intelligence(EQ)!  EQが、AI時代の重要な能力として明確に位置づけられていたことに、とても勇気づけられました。

AIができることが増えるほど、人間は何を磨くべきなのか。AIが情報を整理し、選択肢を示してくれても、何を大切にして判断するのか、相手の気持ちをどう理解するのか、どう協働していくのか。それは人間に問われることです。

私が伝え続けているEQは、感情を抑える技術ではなく、感情を情報として活かす力。
AI時代のEQは、Nice to haveではなく、Must have。講演を聴きながら、そんな思いを強くしました。

34年間、16の役割を経験したからこそ

ジェフさんは、アストラゼネカで34年間、16もの異なる役割を経験してきたそうです。営業、マーケティング、メディカル領域、そして人材開発へ。印象的だったのは、こうしたキャリアを単なる経歴紹介ではなく、ご自身のストーリーとして語っていたこと。

さまざまな現場を経験し、異なる立場の人たちと仕事をしてきたからこそ、相手の仕事を理解し、同じ目線で課題を考えられる。人材開発の専門家である前に、一人のビジネスパートナーであること。その姿勢が言葉の端々から伝わってきました。

私自身も、組織を変える第一歩は「相手を理解しようとすること」だと思っています。人に向き合うことと、仕事に向き合うことは、決して別々ではないのです。

3つのEがつなぐ、学びと行動

もう一つ共鳴したのが、ジェフさんが紹介した「3E Framework」。

  • Education:知識を学び、理解する

  • Exposure:人や事例に触れ、可能性を知る

  • Experience:実際の仕事で試し、経験する

大切なのは、これらを一度きりの学習で終わらせず、行き来しながら学び続けること。これを聴きながら、私たちアイズプラスが各社と進めている「Lead the SELF → TEAM → BUSINESS」との共通点を感じました。

自分自身への気づきや理解から始まり、他者との関係性を通じて学びを広げ、チームやビジネスでの行動と成果につなげていく。3Eは学びの方法、SELF・TEAM・BUSINESSは価値を広げる領域。異なる枠組みですが、どちらも「学びを現場の行動につなげる」ことを大切にしています。

オープンであることが、関係性をつくる

質疑応答では、外部から関わるコンサルタントの方からこんな質問がありました。
「外部の立場から、どうすれば組織の中に入り込んでいけるのでしょうか?」

ジェフさんの回答は、自分自身がオープンになり、信頼を構築して相手のパートナーとして関わること。シンプルですが、とても深い視点でした。

講演後、日本人の仲間数名でジェフさんを囲み、お話しする機会がありました。一人ひとりの質問に、目を向け、耳を傾け、丁寧に答えてくださる。講演で語られていたことを、ご自身がまさに体現されている。そんな姿が印象的でした。

何を語るかだけでなく、どう人と関わるか。そこに、その人のリーダーシップが表れるのですね。

AI時代だからこそ、人に向き合う

今回のATDでは、AIに関するセッションが数多くありました。でも、私の心に最も残ったのは、テクノロジーの話以上に「人」への向き合い方でした。AIの可能性を、人や組織の価値に変えていくのは、やはり人間です。そしてEQは、その可能性を広げるための大切な力の一つ。現場を見て、一人ひとりの声を聴き、共に考え、行動する。

人材育成は、人を変えることではなく、人が力を発揮できる関係性と環境をつくること。

ジェフさんとの出会いは、私が大切にしている「心豊かに働くをデザインする」というミッションを、あらためて確かめる機会になりました。

Thank you, Geoff!素晴らしい学びと対話に感謝です。

台湾で行ったところー
台湾在住の従姉達が連れて行ってくれたレストランです。
一つひとつ味と色が異なる宝石のような小籠包が美しい✨
お店は台湾SOGOにあります→ 點水樓

 

 

 

【ATD台湾2026|Vol.1】多様性は、なぜ成果につながらないのか? ―「違いを力に」変えるリーダーシップ

多様性は、本当に組織を強くしているのか?

(ブログの内容を、AIでイラストにしてもらいました)

多様な人材を集めれば、組織は強くなるのか?

女性管理職を増やす。外国籍社員を採用する。異なる経験や価値観を持つ人を集める。多くの企業がダイバーシティを推進しています。でも、それは本当に組織の成果や利益につながっているのか?

久しぶりに参加した「ATD Asia Pacific Conference 2026 in 台湾」。2日間にわたり、AIと人材開発、リーダーシップ、組織変革など、刺激的なセッションに参加してきました。今回から、特に印象に残ったプレゼンテーションを中心に、全5回にわたって気づきと学びをレポートしていきます。

ATD台湾→ ATD Asia Pacific Conference & Expo (ATD26APC)

第1回は、初日に最も印象に残ったYih-teen Lee氏(スペインのIESE Business School教授)の講演です。

多様性は、成果を生み出す「素材」にすぎない

Lee氏が紹介したのは、200以上の研究を統合した分析結果。性別、年齢、国籍、文化などの多様性と、チームの高い成果との間には、直接的な相関がほとんど見られないというのです。

つまり、多様性があることと、多様性が成果につながることは、まったく別の話。多様性は、持っているだけで価値を生むものではない。どう活かすかによって、強みにも、対立の原因にもなる。

これは、多様性施策を進める多くの企業の皆さんと、あらためて考えたいメッセージだと感じました。

Gapをなくすのではなく、橋を架ける

Lee氏が話してくれた、スペインで物乞いの方が見せた白人と東洋人への対応の違いなどが印象的でした。同じ言葉を話しながら歩いていたLee氏(東洋人)と同僚(スペイン人)ですが、通り過ぎる際にはLee氏にのみ差別的な侮辱的な言葉を投げかけたのです。彼は、これが象徴的なGapと感じたそうです。東洋人である私たちには、よく出会う場面の一つですが、そこを知識、信頼、権力Gapと捉えることが興味深いですね。
Lee氏は、多様な人々が協働するときに生まれる3つのGapを紹介しました。

  • Knowledge Gap:知識や文化、コミュニケーションの違い

  • Relational Gap:信頼関係や心理的な距離の違い

  • Status Gap:立場や権力、発言力の違い

Gapが生まれること自体は当たり前である視点からスタートする。違う人が集まれば、違いがあるのは当然。むしろ、違いがあるからこそ多様性なのです。

大切なのは、Gapをなくすことではなく、
Gapがあることを前提に、どう橋を架けるか。

その考え方が「Bridge-Building(橋渡し)」です。講演で紹介されたSeek Commonality, Preserve Differences(求同存異:共通の土台を見つけながら、違いを尊重する)という言葉も印象的でした。どちらか一方に合わせるのではなく、共通の目的を持ちながら、それぞれの強みを活かしていく。ソニーやTSMC、楽天などの事例にも、その実践が見られました。

経営陣は「橋渡し」の発想を持てるか?

私が今回、特に強く感じたのはここです。

多様性を推進する制度や施策は増えています。でも、経営陣自身が「違いをどう価値に変えるか」という問いを持っているでしょうか?異なる意見がぶつかったとき、どちらかに合わせようとしていないか。効率を優先するあまり、違いそのものを消そうとしていないか。

多様性を管理する経営から、多様性を活かす経営へ。
その転換こそが、あらためて これからのリーダーシップに期待されていると感じます。

「違いを力に」その先にあるもの

私がダイバーシティに取り組むうえで、ずっと大切にしてきた言葉があります。

「違いを力に」今回のLee氏のプレゼンテーションは、まさにこの言葉を、研究と実践の両面から示してくれたように感じました。

違いがあるから、分かり合えないこともある。
違いがあるから、ぶつかることもある。

でも、違いがあるからこそ、自分には見えていなかった世界が見えてくる。自分一人では思いつかなかった、新しい可能性が生まれる。

その橋渡しを支えるのが、私は共感であり、EQの理解だと思っています。自分の感情に気づき、相手の思いや背景に関心を向ける。そして、互いの違いを持ち寄りながら、まだない答えを共につくっていく。これを中心に、クライアントとプログラムを進めています。

多様性を成果に変えることは、単に組織の生産性を高めることではない。一人ひとりの違いが、誰かの可能性を広げる力になること。

そんな組織が増えたら、働くことはもっと面白く、もっと心豊かなものになるのではないでしょうか。違いをなくすのではなく、違いに橋を架ける。その橋の向こうに、まだ私たちが出会っていない未来がある。

ATDの初日に、まず「多様性のあり方」について考えることができ、とてもワクワクしたスタートとなりました。


台湾で行ったところ→ 
国立台湾工芸研究発展中心 台北当代工芸設計分館
https://www.taipeinavi.com/miru/462/
多様な文化と歴史と現代アートが融合するアート作品が沢山展示されています!しかも無料!アート好きな方にはおススメです。


 

 

 

AIに翻弄される人、AIを使いこなす人。その差を生むのは「EQ」

「AI時代のEQ」というテーマが増えた一年

今年に入ってから、「AI時代のEQ」をテーマにしたご依頼が本当に増えました。組織開発プロジェクト、企業研修、講演、大学の授業。どの現場でも、AIとどう向き合えばいいのかという問いが、静かに、でも確実に広がっているのを感じます。私自身もその当事者の一人として、毎回ワクワクしながら取り組んでいます。

AIとEQ

調査が示した「EQとAI利用頻度は無関係」

米国でEQプログラムを提供するLEADxのCEO、ケビン・クルーズ氏が、興味深い調査結果*1を公表しています。働く人993名のEQを測定し、あわせて「AIを毎日使うか」「毎週使うか」を尋ねたものです。

結果は、EQとAIの利用頻度のあいだに、意味のある関係は見られないというものでした(毎日の利用 r=−0.03、毎週の利用 r=−0.00)。AIを使うかどうかは、職種や業界、AIを使える環境、組織からの期待といった要因のほうが大きいと考えられています。

差が出るのは「量」ではなく「使い方」

では、EQはAIと無関係なのでしょうか。クルーズ氏自身は、EQはAIの効果を何倍にも高める「フォース・マルチプライヤー」になり得ると述べています。EQの高い人は、AIをより思慮深く使えるはずだ、という見立てです。

逆に、EQが低いままAIを多用すると、生成AIの誤情報を見落としたり、確認が甘くなったりする危険がある。同記事では、AIが原因の事実誤りを含む報告書をめぐって大手コンサルティング会社が問題視された事例も紹介されています*2。

現場で私が見てきたこと

この指摘は、私が各現場で感じていることと、ぴたりと重なります。

EQを活かすほど、AIのアウトプットの質は高まる。

EQを学んだ方々は、AIに問いを投げる「前」に立ち止まります。

  • 自分は、そもそもどうありたいのか
  • この資料を読む人に、どうなってほしいのか
  • この仕事を通じて、どんな変化を描いているのか

これらを描いたうえで問いを立てるから、AIの答えに翻弄されません。「それらしいけれど、私が届けたいのはこれじゃない」と見極め、問いを立て直せるのです。

AIは「何のために」を教えてくれない

一方、ゴールを描かずに問いを投げると、もっともらしい答えが出るたびに心が揺れ、気づけばAIのペースに巻き込まれてしまいます。

この差は、ITスキルの差ではありません。自分の感情や願いに気づき、届ける/巻き込む相手を想像し、望む未来を描く力、つまりEQの差です。日式EQがすべての中心に「ありたい姿」を置いているのも、そのためです。AIは答えを出してくれても、「何のために」は教えてくれません。

30秒の問いかけから始めよう

AIを使う前に、ほんの30秒でいいので自分に問いかけてみてください。

「私はこの仕事で、誰に、どうなってほしいんだろう?」
「この取り組みで、どんな世界をみたいんだろう?」
「これを見たお客さんに、どんな気持ちになってほしい?」

その一呼吸が、AIを"翻弄される相手"から"心強い相棒"に変えてくれるはずです。AIの時代だからこそ、心豊かに働くをデザインする力が、私たち一人ひとりに求められています。

👉『AI×EQ』を現場で実践する「職場のEQ活用のヒント」はこちら

is-plus.jp



「うまく話さなきゃ」を手放すまで ――鎌倉FM【How do you feel?】67回目の気づき

「うまく話す」より「深く聴く」に気づくまで

鎌倉FM【How do you feel?】は6年目に入り、気づけば放送は67回を数えていました。毎回お越しくださるゲストの皆さん、番組を支えてくださる方々に、心から感謝しています。節目というわけではありませんが、このあたりで、あらためてラジオの活動について綴ってみたいと思います。

https://www.kamakurafm.co.jp/

■「コンサルティング会社が、ラジオ?」

「ラジオ番組をやりませんか?」とお声がけいただいたとき、正直に言えば、私はとっさに「コンサルティング会社がそんなこと……」と思いました。

背中を押してくれたのは、アイズプラスのメンバーでした。「より多くの方々に、EQの魅力を伝えてみたい」。その声を聞いて、まずはやってみるか!と始めたのが2021年4月のことです。

EQ(感情知性)は、研修や組織開発の場で語られることの多いスキルです。ですが、本来は、誰もが日々の暮らしや人生の選択の中で使っているもの。ビジネスだけでなく、私たちの人生に活かせるものとして伝えたい。その想いが、ラジオという場につながりました。

 

■実は、楽しめていなかった数年間

ここで告白すると、最初の数年、私はあまり番組を楽しめていませんでした。

理由ははっきりしています。「うまく話さなきゃ」「いいことを言わなきゃ」。そんなエゴが、いつも頭の片隅にあったのです。ゲストのお話を聴きながら、次に自分が何を言うかを考えている。今振り返ると、なんとももったいない時間の過ごし方でした。

変化を感じ始めたのは、昨年あたりからです。相手の話にただ集中して聴くことの心地よさを、少しずつ感じられるようになりました。EQを伝える仕事をしていながら、これを学ぶのに随分と時間がかかったものです。

 

■感情から、その人の魅力を再発見する

番組では、ステキな活動をされている方々をゲストにお迎えし、その活動の根っこにある「感情」についてうかがっています。何に心が動いて始めたのか。続ける中で、どんな気持ちと向き合ってきたのか。

聴くことに集中できるようになって、気づいたことがあります。毎回、私自身がその方の魅力を再発見しているのです。よく知っているつもりの方でも、感情の話になると、肩書きや実績からは見えなかった、その方らしさが立ち上がってきます。

ゲストの多くは、鎌倉にゆかりのある方々、または私たちが『感情を活かしている』と感じる方々にご協力いただいています。お寺のご住職、骨董店の店主、料理人、経営者、コーチ――。「鎌倉×感情を活かす」を軸に、働く人の数だけあるキャリアと感情の活かし方に触れてきました。

 

■鳩子の部屋と、アーカイブのこと

番組後半の「鳩子の部屋」では、鳩子ちゃんと鳩ばあの対話を通じて、日常でEQを活かすヒントをお届けしています。普段私たちが担当している大学教育の現場から、またはリスナーの方々からのリアルな質問などをベースに、毎回スクリプトを作成し、プロの俳優さんに鳩子ちゃんに音を入れていただいています。

また、放送はポッドキャストとしてアーカイブを残し、大学生の副教材としても活用しています。さまざまな大人が、自分の仕事と感情を率直に語る声は、これから社会に出る学生にとって何よりの生きた教材です。先日も、学生から「○○という仕事に就く人の本音が知れて良かった。」「お父さんと同じ仕事をしている人がいて、すごく興味がわいた」などのコメントがありました。

 

■これからも、聴くことから

67回を重ねて、ようやく「聴く」ことの入口に立てた気がしています。誰もがもつ「感情」をベースに、人を知るラジオ番組です。これからも、ゲストの皆さんの感情に耳を澄ませながら、一回一回を味わっていきたいと思います。

 

▼全てのアーカイブはこちらから
https://is-pluseq.com/podcast/

写真は、直近4ケ月ほどのゲストの皆さんとの収録現場写真とアーカイブURLです。ぜひお聴きください♪

7月放送ゲスト:鎌倉のFishバーガー屋さん MoreFish代表の岩淵さん

How do you feel? #64_more Fish! オーナー 岩渕史武さん - EQ+LAB.

8月ゲスト:世界をハッピーにするデザイン思考の中澤さん

How do you feel? #65_株式会社Ringfish 中澤雄一郎さん - EQ+LAB.

9月放送ゲスト: 経営xリーダーシップで次世代育成にとりくむ小杉さん

How do you feel? #66_合同会社THS経営組織研究所 代表社員 小杉 俊哉さん - EQ+LAB.

10月ゲスト:海の楽しさを伝える リビエラリゾートの新谷さん
(アーカイブは来月に発行予定です) 

 

言いたかった一言を、ひっこめた日|リーダーの表情と心理的安全性

「そういえば、表情って見ていなかったかも」

先日のワークショップで、あるリーダーの方がぽつりとつぶやいた一言です。

この秋は、毎年担当している京都大学医学部附属病院でのEQリーダーシップ、グローバル製薬・IT・メーカー企業での「AI時代のEQ」プログラム、そして先週は鎌倉市役所でのリーダー向け1on1研修と、現場が続いています。業種も立場も違うのに、いま皆さんの気づきが集中するのが「ノンバーバルスキル」、つまり表情です。

EQ検査の項目にある「ノンバーバルスキル」は、しぐさ・表情・視線など、言葉以外で感情を表現する度合いを指します。

ここで、よくいただく言葉があります。「これ、ビジネスに必要ですか?」「うちの会社は、表情を変えたところで成果に直結しませんよ」でも、これが大きく影響するのです。

■ 言いたかったことを、ひっこめた日

私自身の経験です。会社員時代、1on1の時間に、「今日こそ伝えよう!」と少しチャレンジングな提案をまとめて上司の部屋に入りました。ドアを開けて、上司の表情を見た瞬間に、準備していた言葉を思わずひっこめていました。上司は何も言っていません。ただ、その表情を見ただけで引っ込めてしまったのです。

皆さんにも、ありませんか? そしてもう一つ。自分が「ひっこめさせた側」だったことは、ないでしょうか。これは気のせいでも、気が弱いからでもありません。科学が裏づけています。

 

■ 表情は、勝手に伝わる

スウェーデンの心理学者ディンバーグらの実験(2000年)*1では、本人が「見た」と自覚できないほど一瞬だけ表情の写真を見せても、見た人の顔の筋肉が同じ表情の方向に反応しました。表情は、伝えようとしなくても伝わり、受け取ろうとしなくても受け取ってしまうものなのです。

 

■ 伝わった感情は、チームの成果を変える

組織行動学者バーセイドの研究(2002年)*2では、グループの中のたった一人の感情が全体に広がり、協力の度合いや成果の評価にまで影響することが示されました。「感情の伝染」と呼ばれる現象です。

 

■ オンラインでも同じことが起きている

2026年に学術誌『Acta Psychologica』に掲載された、実務者400人を対象とした研究では、画面越しのリーダーの表情が、メンバーの「言っても大丈夫」という安心感につながり、それがチームの成果につながるという関係が報告*3されています。

つまり、リーダーの表情ひとつが、メンバーが「言おうか迷った一言」を口にできるかどうかに影響する、大切な要素の一つなのです。あの日の私がひっこめた一言、誰かがひっこめた提案は、もしかしたら組織にとって大事な一言だったかもしれません。

 

■ 表情は誰のもの?

自分の顔は、自分では見えません。見ているのは、いつも相手です。

AIが言葉を整え、表情さえ分析する時代。だからこそ私たち人間には、相手の感情を想像し、自分の感情を適切に表現しながら、信頼関係を築く力が求められます。

まずは今日、会議の最初の10秒だけ、画面の中の自分の顔を見てみてください。そこに映っているのが、チームが毎日受け取っているメッセージです。表情は、私たちが意識して選択できる行動の一つです。

isplus1.hatenablog.com

 

 

■ 11月16日、表情を科学的に学ぶ会を開きます

普段何気なく見ている表情。その一瞬に、相手を理解するヒントが隠れているかもしれません。

11月16日のEQ学び会は「チームづくりに活かす微表情」がテーマ。講師は、株式会社空気を読むを科学する研究所の清水建二さん。一瞬だけ顔に現れる「微表情」の読み方と、チームづくりへの活かし方を学びます。清水さんはTVドラマの表情監修も手がける専門家。今話題のあのドラマの裏話も聞けるかも!

「そういえば最近、相手の表情をちゃんと見ていなかったかも」という方、ぜひご一緒しましょう!

 

▼詳細・お申し込み
https://isplus-eq-20261116.peatix.com/

isplus-eq-20261116.peatix.com

 

*1:Dimberg, U., Thunberg, M., & Elmehed, K. (2000). Unconscious facial reactions to emotional facial expressions. Psychological Science, 11(1), 86–89.

*2:Barsade, S. G. (2002). The ripple effect: Emotional contagion and its influence on group behavior. Administrative Science Quarterly, 47(4), 644–675.

*3:Emotional contagion in virtual leadership: A webcam-based study of expressivity, psychological safety, and team output. Acta Psychologica (2026). PMID: 41722218

その「?」、そのままにしないで。EQ+LAB.にAIチャットを設置しました

お陰さまで、アイズプラスでのEQ検査の提供数が7,000件を超えました。
多様な組織の皆さんと、EQをベースにしたリーダー育成や組織開発に取り組む日々。
今週も、行政の現場で、教育現場で、そして企業のリーダー育成の現場でと、EQをベースとした人材・組織開発に走り回っております。

■学びは「ワークショップの後」が本番

ワークショップは毎回高い評価をいただき、本当にありがたいことです。ただ、私がいつも気にかけているのは、その“後”のことです。

職場に戻ると、「あの話って、どういう意味だったっけ?」「自分のこのタイプ、どう活かせばいいんだろう?」と、小さな疑問が湧いてきます。でもその疑問は、たいてい忙しさの中で消えてしまう。
実はここが、学びが止まるかどうかの分かれ道なのです。

■いつでも、何度でも聞けるAIチャット

そこで、アイズプラスのサイト「EQ+LAB.」にAIチャットを設置しました。これまで受講者向けのEQ開発ツール内で限られた方だけが使っていたものを、どなたでも使えるように公開しています。

ベースになっているのは、私が20年間書き続けてきた記事やブログです。使ってくださった方から「まるで池照さんが話しているみたい!」という声もいただき、ちょっと照れくさいけれど、とても嬉しく思っています。

夜中でも移動中でも、思い立ったときに気軽に聞けます。「こんなこと聞いていいのかな?」というハードルを、できるだけ下げたかったのです。

 

■たとえば、こんな質問ができます

💬 性格がおとなしい・口数が少ないタイプでも、EQを高くすることはできますか?
回答はこんな風に出てきます→


その他、以下のような「よくある質問」もあります。
💬 感情的被影響性を高めるメリットは?
「感情的被影響性」は、EQI検査の素養名で、感情に影響を受けやすい度合いのことをいいます。EQ用語になるため、質問したい方が多い項目の一つです。

💬 EQはどのように測定できますか?
EQには多くのアセスメントが存在します。アイズプラスで実施できるアセスメントを紹介しています。

どれも、ワークショップでよくいただく質問です。特に冒頭の『おとなしいタイプでもEQを高められるか』は、『EQは社交的な人のもの』と思い込んでいる方に、ぜひ読んでいただきたい問いです。

「よくある質問」を眺めているだけでも、EQの理解が少しずつ深まっていくはずです。
ただし、これはあくまでAIによる回答です。以下の注釈もしっかりつけています。
※AIによる回答のため、内容が十分でない場合があります。個人情報や社外秘の情報は入力しないでください

 

■小さな「?」の解消が、継続的な開発になる

EQは、一度学んで終わりではありません。日々の中で育てていくものです。

疑問が湧く → 調べる → 職場で試す → また気づく。この小さなサイクルを回し続けることが、一人ひとりの「ありたい姿」に近づく一番の近道だと、私は考えています。

いま各社の事務局の皆さんと進めている「ピアグループ活動」が、仲間と学びを分かち合う“横のつながり”だとすれば、AIチャットは、一人でもいつでも立ち返れる“自分の伴走者”です。この両輪で、学びを続けられる環境をつくっていきます。

 

■まずは一つ、聞いてみてください

EQ検査やアイズプラスのプログラムを受講した方を想定していますが、どなたでもご利用いただけます。

最近気になっていること、ずっと引っかかっていたこと。どんなに小さな「?」でも大丈夫です。まずは一つ、話しかけてみてください♪

▼EQ+LAB. AIチャットはこちら https://is-pluseq.com/eq-ai-chat/



🏢設置にあたっては、マックスストーンの飯岡直樹さんとチームの皆さんに丁寧にサポートいただきました。ありがとうございました!
マックスストーン様→会社概要 - 株式会社マックスストーン