「AI時代のEQ」というテーマが増えた一年
今年に入ってから、「AI時代のEQ」をテーマにしたご依頼が本当に増えました。組織開発プロジェクト、企業研修、講演、大学の授業。どの現場でも、AIとどう向き合えばいいのかという問いが、静かに、でも確実に広がっているのを感じます。私自身もその当事者の一人として、毎回ワクワクしながら取り組んでいます。

調査が示した「EQとAI利用頻度は無関係」
米国でEQプログラムを提供するLEADxのCEO、ケビン・クルーズ氏が、興味深い調査結果*1を公表しています。働く人993名のEQを測定し、あわせて「AIを毎日使うか」「毎週使うか」を尋ねたものです。
結果は、EQとAIの利用頻度のあいだに、意味のある関係は見られないというものでした(毎日の利用 r=−0.03、毎週の利用 r=−0.00)。AIを使うかどうかは、職種や業界、AIを使える環境、組織からの期待といった要因のほうが大きいと考えられています。
差が出るのは「量」ではなく「使い方」
では、EQはAIと無関係なのでしょうか。クルーズ氏自身は、EQはAIの効果を何倍にも高める「フォース・マルチプライヤー」になり得ると述べています。EQの高い人は、AIをより思慮深く使えるはずだ、という見立てです。
逆に、EQが低いままAIを多用すると、生成AIの誤情報を見落としたり、確認が甘くなったりする危険がある。同記事では、AIが原因の事実誤りを含む報告書をめぐって大手コンサルティング会社が問題視された事例も紹介されています*2。
現場で私が見てきたこと
この指摘は、私が各現場で感じていることと、ぴたりと重なります。
EQを活かすほど、AIのアウトプットの質は高まる。
EQを学んだ方々は、AIに問いを投げる「前」に立ち止まります。
- 自分は、そもそもどうありたいのか
- この資料を読む人に、どうなってほしいのか
- この仕事を通じて、どんな変化を描いているのか
これらを描いたうえで問いを立てるから、AIの答えに翻弄されません。「それらしいけれど、私が届けたいのはこれじゃない」と見極め、問いを立て直せるのです。
AIは「何のために」を教えてくれない
一方、ゴールを描かずに問いを投げると、もっともらしい答えが出るたびに心が揺れ、気づけばAIのペースに巻き込まれてしまいます。
この差は、ITスキルの差ではありません。自分の感情や願いに気づき、届ける/巻き込む相手を想像し、望む未来を描く力、つまりEQの差です。日式EQがすべての中心に「ありたい姿」を置いているのも、そのためです。AIは答えを出してくれても、「何のために」は教えてくれません。
30秒の問いかけから始めよう
AIを使う前に、ほんの30秒でいいので自分に問いかけてみてください。
「私はこの仕事で、誰に、どうなってほしいんだろう?」
「この取り組みで、どんな世界をみたいんだろう?」
「これを見たお客さんに、どんな気持ちになってほしい?」
その一呼吸が、AIを"翻弄される相手"から"心強い相棒"に変えてくれるはずです。AIの時代だからこそ、心豊かに働くをデザインする力が、私たち一人ひとりに求められています。
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