いろいろとごたついて気持ちよくスタートとは言えない
2020 TOKYOオリンピックでしたが、
世界中のアスリートが集まるオリンピックは、
世界中の人々がコロナと戦う中で開催を決め、
世界中の人がこれまでと違った想いや気持ちをもって開催されたもの。
今年は、これまでと違った見方ができた気がしています。
■ あなたから学んだEQとレジリエンス
アメリカの体操選手、シモーネ・バイルズ選手をご存知でしょうか?
(英語的にはシモーンと呼ぶ気がしますが、ここは日本のメディア表記に従います)
2016年リオデジャネイロオリンピックの体操競技の各種目で金メダルを
獲得し4冠を達成、世界体操競技選手権では2013年から2019年現在まで
に通算で25個のメダルを獲得し、男女を通じて史上最多のメダル獲得者
となっているトップアスリートです。
今回の東京オリンピックでは、自身のメンタルヘルスのケアを優先したいと
団体総合や個人総合を棄権。それでも、8月3日に行われた平均台に出場し、
見事銅メダルを取得しています。
自分自身のメンタルヘルス(心身の状態)に目を向け、自覚し、
決断することは、国の代表として出場するオリンピックにおいて、
そう簡単なことではないはずです。
その中で、彼女は自身を冷静に見つめ、自分に正直に向き合い、
勇気をもって決断したのです。
これに対し、彼女ともともと親交のある歌手の
テイラースウィフトがTwitterでこのようなことをつぶやいています→
「私もあなたを見て泣きました。この数年、あなたの(活躍の)ことを
見てこられたのはとても幸運です。でも今週はあなたからEQ(感情知性)
とレジリエンス回復力)の両方を学びました。ありがとう」
■期待と気持ち
この話を知った時、先日ある企業の幹部の方とEQコーチングを通して
うかがった一言を思いだしました。
「若手の頃、上司や周囲からの期待が嬉しくもあり、そして自分にとって
あまりに大きくて会社に行くことが本当に嫌だった時期がある。でも
誰にも言えなかった」
一流と呼ばれる大学を出て、優秀層が集まる部門に配属され、
エースが選抜されるプロジェクトを任される、そんなキャリアの中で
一番抜けていたのが「自分はどうしたい?」という問いと、その問いに
自分で感じて考え抜く時間や行動だったとその方は語ります。
彼はその後、会社を辞め、しばらく仕事をしないでいた
時期を経て現在の会社ではイキイキと活躍をされています。
会社を辞めるが20代後半まで、実は「自分で感じ、自分で考え、
自分で決めて、自分で行動する」ことはほとんどなかったとも
話して下さいました。だからこそ、彼は今の会社の自分のチームには、
まず「自分を感じる」ことの大切さを伝えたいと言います。
期待は嬉しいものです。誰かに期待し、そう声をかけることで
大きな勇気につながって誰かの人生が大きくポジティブに開けて
いったりします。ですが、様々なところから「期待」を受け取り、
その量が多すぎてしまうか、自分をつぶしてしまわないかは、
他の誰でもない、自分自身が一番よく分かることなのです。
「期待」も大事ですが、自分の「気持ち」に着目することも大切です。
■自分自身に目を向ける
シモーネ・バイルズ選手は、棄権のことを告げる会見で
次のようにも語っています→
「私たちは自分自身にも目を向けなければなりません。
私たちは、ただ外に出て世界が私たちに望んでいることをするのではなく、
自分の心と体を守らなければならないのです」
これまで私が抱いていたオリンピックは、
国の威信を抱え、期待を一身に背負ったアスリートが勝ち負けに
涙を流す場でした。それはそれで威厳と正義を感じさせるものの、
負けてしまった時の選手からの「まわりに申し訳ない」感には、
誰の・なんのためのオリンピックなのか?に疑問が残る点もありました。
今回のオリンピックでは、アスリート自身が「自分」を主語にして語る姿を
多く見ることができ、年齢や実績に関わらず、そのように発言し、
そのように自分自身の納得を重ねるアスリートの姿に、清々しい感銘を
受けたのです。「本人の納得」が中心にある一種の爽快感を感じています。
アスリートに限らず、一人ひとりが自分の世界で自分自身を解き放ち、
自分の人生をよりよくしていく権利があるのですから。
もうすぐパラリンピックも始まります。そして
次回のパリオリンピックは、どんな新しい価値観に触れることができるのか、
今から楽しみでなりません。
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